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研修満足度をKPIにした瞬間、研修はイベントになる

新田 光勇
新田 光勇
2026.01.31

満足度をKPIにした瞬間、研修はイベントになる 

結局、研修の満足度アンケートとは何なのでしょうか。 

点数が低いと、人事は改善しようとします。 
研修会社に要望を出し、次回は満足度を上げようとする。 

でも、ぼくはずっとこの点に違和感を持っています。  

研修は受講者を満足させるためにあるのではなく、 
組織として、現場の行動を変えるためにあると思っています。 

満足度アンケートをKPIにしている時点で、
研修は「イベント」に堕ちてしまうのではないかと思います。

人事がそれをやるのは、
経営で言えば「売上ではなく来店者の機嫌を追いかけている」のと同じだと思うのです。
 
優先順位が逆だと思うんですよね。 

ただし誤解しないで貰いたいのは、満足度を捨てろと言っているわけではありません。 
使い方が雑すぎるかなって思うんです。 

 
満足度がズレるのは当然。期待がバラバラだから 

満足度は、受講者が何を期待していたかで決まると思います。 
そのため、ここを無視して点数だけ見ても、議論は空中戦になります。 

たとえば、受講者にはこういうタイプが混在しています。 

・知的な刺激が欲しい人 
・日常から離れてゆるく学べればいい人 
・強制参加だから目立たず終わりたい人 

同じ研修の受講者間でも、期待(ゴール)が違う。 
この状態で「満足しましたか」を平均点で判定するのは、計測として破綻していると感じるんです。 

つまり、満足度が低いから研修が悪い、という結論は雑すぎるかなと。 
測れていないものを測った気になっているだけではないかと。 

 
満足度を追うと、改善はだいたい”演出”に寄る 

満足度を上げようとすると、改善がどこへ向かうか。だいたい決まっています。 
・負荷を下げる 
・気持ちよく終わらせる 
・講師の話芸を強化する 
・ワークを「楽しい」に寄せる 
・不快な沈黙や摩擦を減らす 

 点数は上がります。 
でも、現場が変わるとは限りません。むしろ変わらないことの方が多いと感じています。 

ここが一番まずいところです。
組織が求めているのは「いい時間だった」ではなく、翌日の現場で行動が変わることだと思うんです。

 

逆に言うと、満足度が低い研修は”悪い兆候”とは限らない 

ここは意外に思われるかもしれません。 
本気で現場を変えにいく研修は、一定の不満が出ることがあります。 

負荷がかかる。痛いところを突く。逃げ道を潰す。実装を求める。

それは、イベントではなく「変化の介入」だからです。 

なので、満足度が低いときに問うべきは、こうです。 
不満は「無意味」への反応なのか。「変化の痛み」への反応なのか。 

ここを分けずに改善に走るから、研修が薄まっていくと私は思っています。 

 

研修をプロダクトとして見ると、KPIの順番が見える 

研修をプロダクトだと思って見ると、 
満足度は、せいぜい体験指標のひとつに過ぎないことがわかります。 

本当に見たいのは、研修の後に現場で使われたかどうか。 
思考と行動が定着したか、成果に寄与したか。 

研修の評価は、この順番にした方が良いのではないかと。 

1.期待の整合:受講者の期待と、組織の期待を並べてズレを見る
2.行動の定義:研修後に「何ができるようになれば良いか」を行動で言い切る
3.観測の設計:研修後に誰がいつ何を見るかを決める
4.結果の接続:成果指標に直接つながらなくても、近い代理指標を置く 

満足度はこの後です。 
満足度を入口に置いた瞬間、研修がイベントに堕ちると思うんですよね。 

 
▼満足度アンケートは体温計として使う 

満足度は「良し悪し判定」ではありません。 
運用上の事故検知として使うのが最も有効ではないかと、ぼくは思います。

やるなら最低限これだけ。 

・平均点で判断しない。層別する。
役割、事前期待、温度感で切る。
・設問を「気分」から「有用性」に寄せる
・楽しかったかより、現場で使える形になったか。明日から一つ変えるなら何か。
・自由記述は改善要望箱として読まない
・実装を邪魔する摩擦、現場の原因・予兆を拾う。

これで初めて、満足度が意味を持つようになると思います。

 

 人事が最初にやるべきことは、満足度改善ではない 

最後に、ここだけは断言します。 
満足度が低いから研修を変える、は一見すると良い行動に見えます。

でも多くの場合、それは研修を変えたのではありません。 
受講者の気分に寄せただけです。 

人事がやるべきだと私が考えるのは、
研修の”中身”の改善より先に、研修後の”接続”の設計です。
 

・翌日の行動を1つ決める
それを上司が見るタイミングを決める 
・組織として期待する変化とつなぐ 

これがない限り、どれだけ満足度を上げても、現場は変わらないと考えます。

満足度を上げるのは、実は簡単です。  
拍手が起きる研修も作れます。  
でも組織が欲しいのは拍手ではないはずです。 
 
現場で一歩進むこと。 
そこから逃げない方が良いと私は思っています。 

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