▼入社時研修が終わった今、見直したいのはその先の受け入れです
4月に入り、新入社員研修を終えた企業も多いと思います。
人事の皆さまにとっては、ここまでがひとつの山場だったはずです。
日程を押さえ、研修内容を考え、当日の運営を整える。
早いところでは、かなり前から準備を進めてこられたのではないでしょうか。
そうして丁寧に準備された入社時研修は、新入社員にとって会社との大切な最初の接点になったと思います。
だからこそ、多くの企業がそこにしっかり時間をかけているのだと思います。
ただ、新入社員の立場から見ると、入社時研修は数ある接点の一つにすぎません。
・配属初日にどんな言葉をかけられたか。
・上司とどんな対話があったか。
・最初にどんな仕事を任されたか。
・困ったときに誰に相談できたか。
そうした一つひとつの接点もまた、その会社で働き始める体験を形づくっていくものだと思っています。
要するに、入社時研修が終わった今こそ、本当に見直したいのはその先の受け入れです。
▼入社時研修は大切。でも、それだけでは足りない
入社時研修は、会社として伝えたいことを届ける大事な場だと思っています。
会社の考え方やルール、仕事の基本姿勢を共有する意味でも、とても重要な役割があります。
ただ、ここで少し立ち止まって考えたいんですよね。
新入社員が本当に「この会社でやっていけそうだ」と感じるのは、どの瞬間なのか。
おそらく、それは研修会場の中だけではありません。
むしろ、その後の現場での体験のほうが、印象としては強く残ることも多いはずです。
・研修で丁寧な説明を受けた。
・でも配属後に、誰に何を聞けばいいかわからない。
・何を期待されているのか見えない。
・毎日が手探りのまま過ぎていく。
これでは、せっかく研修で伝えたことも、現場でうまく接続されません。
研修が悪いわけではないんです。そこは丁寧にやっていると私も顧客の皆様から感じています。
でも、研修のその先が未設計だと、どうしても効き切らないかなと。
結局、ここです。
▼新入社員にとっては、すべての接点がオンボーディングになる
人事の皆さまが新入社員を迎える準備を進た「研修」に続く接点はどうでしょうか。
・配属初日
・上司との最初の1on1
・チームメンバーとの会話
・最初に任される仕事
・仕事を終えたあとの振り返り
・同期との関わり
新入社員にとっては、こうした接点もすべて、
「この会社で働くとはどういうことか」を理解する材料になると思うんですよね
言い換えると、オンボーディングは研修だけで進むものではなく、
複数の接点の積み重ねで進んでいくものだと私は考えます。
だからこそ、一つひとつの接点がバラバラだと、新入社員は戸惑いやすくなるかなと。
・研修では大切にしていると言われたことが、現場ではそう見えない。
・上司によって期待の伝え方が違う。
・チームによって関わり方に差がある。
受け入れる側からすると、どれも小さなことに見えるかもしれません。
でも新入社員からすると、その一つひとつが会社そのものです。
制度より先に、接点で会社を理解するものかなと。
私自身も振り返ると最初の数週間は特にそうだったと記憶しています。
▼エンゲージメントは、派手な施策より“納得できる接点”から生まれる
エンゲージメントという言葉は便利ですが、
少し便利すぎるところもあるかなって思っています。
なので、ここではもう少し地に足のついた言い方をしたいと思います。
新入社員の時期に大事なのは、「この会社でやっていけそうだ」と思えること。
そして、「自分はここで何を期待されているのか」「自分の仕事は何につながっているのか」が少しずつ見えてくることです。
その感覚は、何か特別なイベントで急に生まれるものではないと思います。
・自分に何を期待しているのかがわかる
・困ったときに頼っていい相手がいる
・小さくても役に立てた実感がある
・自分の仕事が、チームや組織の方向性とつながって見える
こうした接点が少しずつ積み重なることで、「ここで働く」ことへの納得感が育っていく。
その延長線上にエンゲージメントがある。私は、そう考えています。
逆に言えば、入社時研修をどれだけ丁寧に実施しても、その後の接点がつながっていなければ、この納得感は育ちにくい。
エンゲージメントを高めたいなら、
何か新しい施策を足す前に、最初の接点がちゃんとつながっているかを見たほうが早いかなと。
たぶん、そっちのほうが圧倒的に効くと思います。
▼人事は準備してきた。では、受け入れ側の準備はどうだっただろう
ここで一度、立ち止まって考えてみたいことがあるんですよね。
人事は新入社員を迎える準備をかなり前から進めてきました。
では、受け入れ側の現場はどうだったでしょうか。
もちろん、現場も忙しいです。
新入社員を迎えたい気持ちはあっても、
目の前の業務に追われる中で、十分な準備の時間を確保するのは簡単ではないことも容易に想像できます。
その結果、歓迎の気持ちはあるのに、受け入れの設計までは十分にできていない。
そんなことも、決して珍しくないと私は思っています。
そして、もし今、新入社員の立ち上がりが個人任せになっている感覚があるなら、
それは見直しのサインかもしれません。
理由は単純で、上司の力量やチームの余裕によって、体験の質が大きく変わってしまうからです。
これは、誰かの熱意が足りないという話ではありません。
迎え入れる側の役割や期待値が、
事前に十分揃っていなかったことが原因で起きることも多いのだと思います。
善意はある。でも設計がない。
ここは、かなり起きやすい論点かなと。
▼今からでも見直せるのは、「誰が、どの接点で、何を担うか」
新入社員を迎える準備というと、どうしても研修の中身に意識が向きやすいものです。
でも実際には、その前後も含めて考えたほうが、立ち上がりは安定します。
そのときに大事なのは、「誰が、どの接点で、何を担うか」を揃えておくことだと私は考えます。
たとえば、
・1年後に、どのような姿を期待しているのか。
・その期待する姿は、配属先の戦略や重点課題とどうつながっているのか。
・その姿に近づくために、最初の数か月で何を経験してほしいのか。
・どの接点で、誰が、何を伝え、何を支えるのか。
こうしたことが予め共有されているだけでも、新入社員の受け入れはかなり変わってくると思うんですよね。
逆にここが曖昧なままだと、現場はそれぞれの善意で頑張ることになってしまします。
もちろん善意は大切です。でも、善意だけで毎年同じ質を保つのは難しいかと。
少し意地悪に言えば、「ちゃんと迎えたい気持ちはある」は、設計の代わりにはならないんですよね。
▼4月に入った今だからこそ、できることがある
では、このタイミングで人事として何ができるのでしょうか。
今から大きな仕組みを新しく作るのは現実的ではないかもしれません。ですが、見直せることはあります。
ひとつは、新入社員に1年後どのような姿を期待するのかを、改めて言葉にしてみること。
そして、その姿が配属先の戦略や現場での役割とどうつながるのかを整理することです。
もうひとつは、新入社員がこれから経験する主な接点を棚卸ししてみること。
配属初日、上司との面談、最初の仕事、振り返りの場なども含めて、
「これからどこでどんな体験をしてほしいのか」を見ていくことが大切です。
さらに、その接点ごとに、
誰にどのような役割を期待するのかを、関係するステークホルダーと共有しておくこと。
人事、配属先のマネージャー、OJT担当、受け入れメンバー。
それぞれが自分の役割を理解しているだけでも、新入社員の安心感は大きく変わります。
▼新入社員を迎える準備は、人事だけの仕事ではない
新入社員を迎えることは、人事の仕事でもあり、現場の仕事でもあります。
もう少し正確に言えば、人事だけでも、現場だけでも成立しない仕事なのだと私は思います。
人事が丁寧に整えた研修と、現場での受け入れが繋がっていること。
その繋がりがあると、新入社員は会社に対する理解を少しずつ深めていけます。
そして、自分の役割や期待が見えてくるほど、「ここでやっていけそうだ」という感覚も育っていきます。
この小さな納得や安心の積み重ねが、
あとから振り返ると、エンゲージメントの土台になっていた。
実際には、そんなことのほうが多いのではないでしょうか。
4月は、研修を終えてひと息つく時期でもあります。
でも同時に、本当の意味での受け入れが始まる時期でもあります。
入社時研修は終わった。
では、その先はどうだろうか。
この問いを、人事だけで抱え込むのではなく、
受け入れるすべての人たちと一緒に考えられると、
新入社員にとっても、迎える側にとっても、良いスタートにつながるように思います。
新入社員は、案外よく見ています。
歓迎会の言葉より、初日の席や、最初の一言や、ちょっとした空気まで見ています。
だからこそ、歓迎ムードより少しだけ準備。
そのほうが、たぶん、ちゃんと伝わります。

